敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~

要さんは今頃、猪川家の面々に囲まれて笑っているだろうか。
それとも、麻里佳さんにふたりきりになりたいとねだられ、ホテルサワクラのプレジデンシャルスイートにでもいるだろうか。

「私が気にすることじゃないでしょう」

呟いて、スプーンでカレーをすくう。
そう、私が気にしなければいけないのは、食事を美味しく食べること。最近サロンに行けていないロングヘアを丁寧にセルフトリートメントすること。冬物をいくつか出しておくこと。明日の朝に延期になった会議の書類に目を通しておくこと。
要さんが今どう過ごしているかは考えなくていい。

この気持ちに気づいてから、私は常に気持ちをやり過ごす方法を探し、それを実行している。そうしないと叶わない気持ちは平気であふれてくるからだ。

要さんが好き。
秘書が抱いてはいけない気持ちを、私は持ってしまっている。