敏腕社長との秘密の身ごもり一夜～身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました～

「彼の名を出せば、彼が私の知らないところでどうなるかわからない。だから、要さんとの婚約解消を訴えながら妊娠期間を過ごした。赤ちゃんが産まれたら、ＤＮＡ鑑定をして要さんと親子関係がないって証明するつもりだった」
「それでも、ＤＮＡ鑑定に納得するまで何か月もかかったよな。悪いが、俺は麻里佳の両親の頑固さにはついていけない」

要さんはふうと嘆息する。

「要さんの言う通りよ。私だって、一刻も早く彼とほのかと三人で暮らしたい。だけど、彼は……彼は父の部下だから」

麻里佳さんは言葉を切って、沈痛な表情でうつむいた。

「彼は父を裏切れないって……。本当は私とほのかと駆け落ちでもなんでもしてほしい」

悲しそうな麻里佳さんの顔を見て、胸が痛んだ。
麻里佳さんの恋人に、私が問いただしたい。麻里佳さんとほのかちゃんにはあなたしかいないのに、どうしてそんなこと言うの？　裏切りたくないなら、最初から麻里佳さんに恋しなければよかったじゃない。

しかし、人の気持ちほどどうにもならないものもないと私は知っている。
私自身、婚約者がいると知りながら要さんに恋をし、彼に抱かれたのだから。

「麻里佳、両親ときちんと話せるのはきみだけだ。彼だって、このままでいいとは思っていないだろう。先に進めるよう考えていこう。俺が手伝えることはする」
「要さん、ありがとう」

麻里佳さんはやっと穏やかに微笑んだ。