敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~

「麻里佳さんと赤ちゃんは、今はご実家にいるんですか?」
「ああ。猪川家の両親は体面が悪いと、麻里佳の出産も俺との婚約解消も表向きにしていない」
「要さんのご両親はそれについては」
「麻里佳の子が俺の子じゃないとわかってからは、猪川家に『婚約関係破綻の責任は求めない』と伝えて、距離を取っているよ。うちの親は、親同士が決めた婚約で俺と麻里佳が自由に恋ができなかったことを悪かったと言ってくれている。案外、理解があるだろう」
「寛容で素晴らしいと思います」

しかし、大地の存在をどう思うかは別だ。
それに、猪川家との問題は本当にすっきりしているのだろうか。猪川グループと合資で動いている仕事もあったはずだ。そのあたりはどうなっているのだろう。
いや、要さんが何も考えていないはずはない。今日は麻里佳さんがわざわざ私と大地に会いに来てくれるのだから、おもてなしに注力しなければ。



麻里佳さんはお昼の少し前にやってきた。

「きちんと挨拶をするのは初めてですね。麻里佳です。娘のほのか」

四ヶ月のお嬢さんは愛らしい丸い目が麻里佳さんそっくりだ。

「高垣都子です。この子は大地」
「都子さんのお話はずっと要さんから聞いていました。まあ、大地くんの眉や鼻の感じが要さんそっくり」