敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~

その日の資料作りはやはり時間がかかったが、半分ほど私が請け負ったために、それでも二十二時にはオフィスを出ることができた。

「今日は自分の車で来てるから、高垣の家まで送る」

片付けていると要さんがそんなことを言う。広尾の自宅マンションから芝の本社まで、たまに自家用車で来ているのだ。過去にも終電がなくなり送ってもらったことはある。

「まだ、電車があるので帰れます」
「ドライブだよ。あと、高垣のマンション近くにハンバーグ屋があるだろ」

確かに近所にはハンバーグが人気のファミレスがある。地方発のお店で都内には数店舗しかなく、二十四時間営業だ。

「腹減りすぎて死にそうだからあそこでガツっと食べたい」
「私を送るのはハンバーグのついで、と」
「そういうこと。高垣も食べるか?」

要さんがニヤリと笑う。

「二十二時過ぎに脂肪たっぷりのハンバーグなんて……」
「食べない?」
「わけがないじゃないですか。私もお腹が減りました」
「そう言うと思った!」

要さんは子どものように無邪気に笑った。こんな笑顔を社員は誰も知らないだろう。