道無き道を進むと、木々に覆われた薄暗い場所に立派な一軒家が見えてきた。4人くらいで住めそうなくらいの大きめの家だった。

ただ、1つ奇妙な点があった。

家の色が濃い緑色と茶色だった。
あまり見かけない色に少し驚いたが、その理由はすぐに分かった。

彼の職業は殺し屋だ。
警察に見つかってしまわないように、という単純、だけど複雑な目的だろう。

「早く入れ。」

玄関の扉を開くと、中は普通の配置だった。
正面にはまた扉があり、左右に1つずつ扉があった。

グレネは、左右には目も暮れずに正面の扉を開けた。

入ってすぐの場所にはキッチンがあり、その奥にはソファや机、インテリアなどが並んでいた。本棚もいくつかあり、とても整頓されていた。

「ここからが俺の家だ。」

彼はそう言うと、部屋の隅の床に何やらカードを翳した。

すると、その床は音も立てずに開き、地下へ続く階段が現れた。

私が驚いて目を見開いていると、グレネはまた私の片腕を掴み、降りろと促した。

階段は意外と長く、降りた先にはまた扉が数箇所あった。この家に扉が多いのは、万が一見つかった場合のカモフラージュらしい。

グレネは、どの扉でもない灰色の壁に先程とはまた違うカードを翳した。
すると、壁が左にスっと開き、真っ暗な闇が現れた。

「セキュリティがすごいですね」

「入れ。」

グレネに続いて私も中へ足を踏み入れると、入ってきた壁が閉じられ、中には明かりがついた。

「光も音も漏れないから大丈夫。なにやってもバレないよ。」

私の表情はきっと、恍惚としていたと思う。
家のギミックにも、彼の美貌にも惹かれていた。そして、たまに出る彼の強くない口調、つまり優しい語尾が、更に魅力的に感じられた。

グレネは、そのまま左へ曲がった所にある扉を、3種類目のカードを使って開けた。

中は、上のリビングの様子とほぼ変わらない内装だった。
グレネはタバコに火をつけ、ふぅと煙を吐き出した。
タバコの匂いが少し苦手な私は、コホコホと噎せた。

「シャワーでも浴びるか?」

彼はそう提案をしてきた。だが、どうしてか頭が働かない。何だか体が重かった。

「え、?」

「…大丈夫か?なんか顔、」

グレネはそう言うと、私に近づいて額に手を当てた。

すると、彼は眉間に皺を寄せた。

「だ、大丈夫です、大したことないし、ちょっとだけ、フラフラするだけ、で」

目の前のグレネのシルエットがグワンと歪み、視界がグルリと回転し、やがて暗転した。体は熱を持ち、頭はガンガンと疼くのを感じた。

「おっ!と、、おい、、!」




私は今、グレネの腕の中だろうか。

そんなことを考える余裕など、無い筈なのに。