双子から聞いた話だが、ルロウはシャノンが目覚めるまでの間、ほとんどの時間をこの部屋で費やしていたらしい。二人は「シャノンが心配だったんだよ!」と嬉々として言っていたが、はたして本当にそうなのだろうか。

 つまらないと興味を無くされ、それから浄化をさせてくれと押しかけ、挙句には緊急事態だからと強引に浄化を行使したのだ。
 うまく良い方向へ進んだとはいえ、状態が改善されたのはあくまでも結果論だ。内心ルロウはいつ殺してやろうかと機会を窺っているのではないか、さすがにそこまではしないか、なんて考えがひたすら頭の中をぐるぐると回っていた。

「食べないのか」
「……?」
「それとも、冷めきったものが好みか?」

 シャノンの手には、双子が持ってきてくれた粥が入った容器がある。まだ移動が難しいので寝台に入ったまま食事をしているのだが、ルロウはいつまでも口をつけないシャノンを不思議に思ったらしい。

「いえ、食べます……いただきます」

 シャノンは急いで消化に良さそうな薬膳粥をスプーンで掬う。
 その様子もルロウは穴が空くほど見つめてくるものだから、口へ運ぶ前に手元が狂ってスプーンが床に転がった。

「あ……っ」
「……」

 少量の粥が床の絨毯に飛び散り、シャノンはヒヤッと青ざめる。ルロウは無表情だったが、分かりやすく眉だけは顰めていた。
 シャノンはいそいそと毛布を捲りスプーンを拾おうとするが、それを止めたのは他でもないルロウである。

「動くな」

 ルロウはたっぷりと余裕のある仕草で椅子を離れると、屈んでスプーンを手に取った。
 手元のスプーンと容器を交互に見たあとで、ルロウはさらっととんでもないことを言う。