教国で聖女の務めを全うしていた頃。

 朝の光を浴びながら、訪れたその日に感謝するのが習わしだった。


(明日なんてこなければいいのに。いつまでも、この夜が続くのなら、ここで)


 シャノンは朝日が恨めしかった。
 始まりを告げる光が憎かった。

 ――だからこそ、衝動のままに死のうとした瞬間もあったように思う。


 それでもシャノンを押しとどめたのは、自死はもっとも愚かなる行為という教会の教えと、見世物小屋に囚われる子供たちを残していけなかったからである。


 だけど、いつ、いつまで、繰り返されるのだろう。
 何度、朝日に絶望すればいいのだろう。

 ――大丈夫、祈りは必ず、いつか救いが、信じないと、祈るの、救いが、救い、救いをください、たすけて、おねがい、もう痛いのはいや、くるしい、痛い、痛い、苦しい、たすけて、救いを、救いを、救いを、救いを、救いを。




 そんなとき、彼は現れた。

「愉しい愉しい見世物小屋は…………ここか?」
(――神、様?)

 美しく整った顔に、にたりと浮かぶのは死を誘う微笑み。
 シャノンには、どんな光よりも眩しいものに見えた。