「あの、わたしは杖がなくても何とか歩けますから」
「……何度も双子に支えられていただろう?」
「それは……」

 ルロウの見定めるような視線に、シャノンは押し黙った。
 ティータイムのときは隣同士に座っているものの、ルロウとこのように意見を交えた会話というのは極めて稀なことで、気恥しさのようなものが出てしまう。

 ましてやルロウの資金で杖を買うなんて、と思っていると、ルロウはひそかに眉を寄せた。

「おれは、すでに決まったことを掘り起こして時間をかけることが嫌いだ。意味、わかるか?」

 さっさと選べ。そう言われていることだけはわかる。
 ルロウはとくに苛ついていたり、怒っているというわけではない。
 ただ、いつも通り空っぽな感情のまま向けられた視線に、シャノンの背筋が妙にぞわついた。

「ほかに意見は、あるか」
「いえ、ありません」

 ごねていても仕方がないので、シャノンはルロウに背を向けて杖を選ぶことに専念する。


「シャノン、いいの見つけた!」


 できるだけ安いものを狙っていたシャノンだが、「これ、絶対にシャノンに似合う!」と自信満々にハオがとびきりの一本を抱えて走ってくる。

 長さや装飾はたしかにシャノンに合うものだった。しかし、値段がとんでもない額で、シャノンは思わずルロウを振り返る。


「決まりだな」


 躊躇など一切せず、ルロウは即決してしまった。

 ここでまた遠慮しても同じ会話が繰り広げられるだけだと悟ったシャノンは、せめて会計の邪魔にならないようにと店の隅の方で待つ。