(あ、あれ?)

 てっきりすでに興味が失われているか、含み笑いをされているかと思っていた。けれど、予想に反して虚を突かれたようにほんのりと瞠目したルロウがそこにいた。

「あの、ごちそうさまでした、おいしかったで、す……?」

 お礼を言い終わる前に、シャノンの唇には再びクッキーが当てられる。

「これも食べるか? うん?」
「は、はあ」

 無表情に戻ったルロウに、またしても進められてしまう。
 一度も二度も同じだと、シャノンはまた口に含む。すると、食べ終えた頃にまた次のクッキーが用意されている。

 クッキーを差し出される、食べる、差し出される、食べる。その繰り返しだった。小粒のクッキーなので無理なく食べられるのだが、ルロウの感情が読めずシャノンは動揺を隠すことができなかった。

「わ〜! フェイロウとシャノン、仲良しだね〜」
「それもぼくが作ったクッキーだよ。シャノン用に小さく焼いたけど、ぴったりだねー」

 いつも通りの双子の騒がしさに加え、部下の異様な雰囲気が伝わってくる。
 
(雛だ……)
(雛鳥だ……)
(雛鳥の餌付けだ)
(まさか、あのルロウ様がこんなこと……)

 一同を驚かせたルロウの妙な行動は、ティータイムが終わるまで続いたのだった。