「邪魔っていわれて逃げたかったけど、ヨキもハオも力が入らなくて〜。そのあいだに追いつかれたけど、フェイロウが大人たちを皆殺しにしてくれたんだ〜」

「それで、最後にぼくたちの体の毒素を吸い取ってくれた。お金も払えないのにどうしてって聞いたら、『おまえらの毒素がもっとも濃く吸収しがいがある』って! しびれるー!」

「…………」


 裏を返せば、過剰有毒者である双子を最優先に考えた発言にも思える。けれど、ルロウはそう生易しい性格だろうか。

(でも、ハオとヨキが助けられたことにはかわりない。わたしも、その一人だから)

 たとえ善意の人助けではなくても、救われた心があり、事実がある。双子たちの昔話を耳にして、また一つルロウのことを知っていく。


「フェイロウと一緒にいたくて追いかけてたら、フェイロウも諦めてヨキたちを置いてくれるようになったんだ〜」

「元々、ぼくたち名前がなかったから、フェイロウが持ってた始末済みの名簿表から選んで、ハオとヨキって名づけてくれたんだよ」

「し、始末済み……」


 何はともあれ、双子たちは自分の名を気に入っている。
 シャノンはそれでいいと思うことにした。

 そしていまでも、定期的にルロウが双子の毒素を吸収しているらしい。

(だけど、過剰有毒者の毒素を吸収し続けるなんて……ルロウ様の体は……)

 体内の魔力に闇の属性反応がある闇使いは、クロバナの毒素を吸収できる。
 闇使いとして実力がある者、取り込んだ毒素をうまく体に押しとどめられる者ほど、身体的負荷が大きい。

 ましてやヴァレンティーノの当主や、時期当主の負担は想像を絶するものだろう。

(この大陸にいるかぎり、毒素の脅威はずっと付きまとう。多くの闇使いが、自分の体を犠牲にして吸収に務めてる。でも、誰にでも限界はあって……そうなれば)

 シャノンの胸に、不安が過った。