***


 寝台の様子を見れば、ルロウが女性たちとどんな夜を過ごしたのか誰でもわかるだろう。
 起きた女性はルロウに熱視線を向けていたが、まったく興味を持っていない様子に困惑するばかりだった。


「ちょっ、何よ急に。昨日はあんなに――」
「邪魔だ、早く消えろ」


 先ほどと同じくねっとりとしたテンポの遅い話口調。けれど、ほんの少し意志を込めた言葉には、威圧感が生まれる。

 たったそれだけの言葉で、周りの温度が下がったようにシャノンには感じた。


「もう、なんなのよ!」

 これ以上居座るのは危険だと本能が働いたのか、暴言を吐かれた女性は残りの二人を起こして、身支度も整わないままそそくさと退室してしまった。


「――ああ、そうか。昨夜連れてきた女だったか。しかし、記憶にないということは、それだけ価値がなかったのだろうな」


 そう言ったルロウは、心底どうでもよさそうに髪をかきあげる。
 片腕をあげた拍子にいままで隠れていた素っ裸の下半身が見えそうになり、シャノンは慌てて首を横に向けた。


「ルロウ、最低限は羽織ってやれ」
「何の話だ?」


 ついさっきシャノンが発言したことも忘れてしまったのか、ルロウは今はじめて気づいたような仕草でシャノンの姿を瞳に収めた。
 

「早く着替えろ」
「わかったわかった」


 二度は言わないという雰囲気のダリアンに、ようやくルロウは下を穿き、上半身はゆとりのある羽織りを素肌の上から袖を通さず肩に掛ける。