シャノンはずっと部屋にいた。

 ダリアンが体調回復に専念させていたため、今日までこもっていたのだ。

 不便は感じなかった。部屋の中は驚くほど広く、特に不自由もなかった。バルコニーに出れば外の空気も吸えるので窮屈な思いをすることなく体感ではあっという間だったのだ。


「ほら、問題なくお前の存在を知らせられただろう。後ほど正式に伝えるが、これで中庭にも出られるようになるぞ」
「……皆さん、驚きを通り越して震えていましたよ?」


 ダリアンの部下からの視線は凄まじく、皆一様に幽霊でも見てしまったかのような顔をしていた。

 それはシャノンという異質の存在が一番の原因だが、シャノンに対する扱いも含まれているのだろう。


「面白かったろう?」
「面白がっているの、当主様だけでしたけど……」
「はは、言うようになったな。その調子だ」
「え?」
「目が覚めた日なんて、粗末なものだったぞ。借りてきた猫のように萎縮していたな」


 日が経って自分の気持ちを前よりもはっきり言えるようになったことが、ダリアンは満足のようだ。

 そうこうしてるうちに三階の端までたどり着く。
 人気はなくなり、静まり返った廊下にシャノンは違和感を覚えた。


「さ、ルロウはこの先だ。昨晩、帰ったと報せが入ったのだが」
「当主様……?」


 扉の前に立ったダリアンは、ぴくりと片眉を動かす。

 中の様子を察した様子で、ため息をこぼした。