「見世物小屋の環境のせいか、それとも……クア教国の聖女はローブで姿を隠していたが、皆小柄な印象だった。もしや成熟期を……いや、それならむしろ都合が良いのかもしれない」

「?」


 少しの思案を挟んだ後、ダリアンは独り言をぶつぶつと唱える。


「お前の事情はわかった。不可解な点はあるが……教会の人間から命を狙われていたということは、そう簡単に帰国もできないだろう。とはいえ、ほかに身寄りもない」


 改めてダリアンから告げられる自分の状況に、シャノンは心細さに駆られる。

 見世物小屋が良かったわけじゃない。逃げられないように足の筋を切られたり、反抗の意思を削ぐために無意味な暴力を振るわれたりもした。

 だから絶対に戻りたいとは思わない。

 それでも、行くあてのない自分が唐突に囚われの身から解放されても、どこに向かえばいいのかわからなかった。


「…………そう、不安そうにするな。提案がある。シャノン、お前にとっても悪い話じゃないはずだ」

「提案?」

「毒素の浄化ができるお前を、我がヴァレンティーノで保護したいと考えている。衣食住は保証する。手厚い待遇もだ。他にも要望があればなんでも叶えよう。その代わり――」


 至極真面目な表情で、ダリアンは言った。



「私の義息である、次期ヴァレンティーノ当主の婚約者になってはくれないか」