哀愁漂う芙実ちゃんの横顔に、なにも言葉をかけてあげることができなかった。
この前松野くんも芙実ちゃんのことを好きだって知っちゃったから、すごくもどかしい。
このまま辛くなって諦めないといいなあ、芙実ちゃん。
「そいえば昨日の合コンどうだったの」
「あー……微妙。どうしても松野くんと比べちゃってだめなんだよね」
「松野くんとって……そんなの勝てる人いる?」
「いない」
あまりに即答。
結局芙実ちゃんの理想は松野くんなんだなあ。
はやくふたりが付き合いますように……。
「……あ、ここだよ、言ってたカフェ!」
芙実ちゃんの声で顔を上げる。
白を基調としたレンガ風の外観にほどよくツルが巻き付けられていて見た目だけですごくおしゃれだってわかる。
入るの、ちょっと緊張するなあ……。
戸惑うわたしをよそに、芙実ちゃんが先陣切ってお店のドアを開ける。
カランコロン、という音が店内に鳴り響き、心地いいジャズのBGMが聞こえてきた。



