「芙実ちゃんって松野くんのこと好きじゃん」
「……なに急に、間違ってないけど」
照れくさそうに笑う芙実ちゃんに問いかけた。
駅へ向かいながら隣を歩く。
「どこが好き?」
「えっ……そりゃあ、声とか顔も好きだけど、誰にでも優しくてどんな相手も邪険にしないところ、とか」
そう話す芙実ちゃんの横顔はまさに恋する乙女って感じで、微笑ましくなる。
……同時に、羨ましくもなった。
「嫉妬とかしないの?」
「……え? 嫉妬?」
考えたこともなかった、というような表情に、わたしも思わず顔を逸らした。
そっか、芙実ちゃんって、嫉妬しないんだ……。
「うーん。でも、松野くんがモテるのは前からだしなあ。いつも周りに女の子がいたから気にならないのかも」
……うん、確かにそうだ。
聖里くんだって、状況としては松野くんと大差なくて、常に女の子に囲まれてた。
だから普段はそれを見てもなんとも思わなかったのに。
三滝先輩と仲良さそうに喋っている聖里くんを見て、わたし、モヤってした。
……なんで?
本当の答えなんか、わかっていたのかもしれないけど、気づかないふりをしてた。
認めたら、このモヤモヤに明確な名前をつけてしまうって分かってたから。



