「なぎちゃーん?」
先に進んでしまっていたらしい芙実ちゃんが、立ち止まったわたしのことを不思議に思ったのか引き返してきた。
「あ、三滝(みたき)先輩じゃん」
「……三滝?」
「なぎちゃん知らないの? 三滝乃愛(のあ)先輩! 三年生で一番可愛いって噂なんだよー」
へえ……でもそんな人がなんで聖里くんに……?
ていうか。わたしには関係ないよね。
分かってるけど……。
「男に興味ないって話だけど、誰と話すときも距離が近いから誤解されやすいんだよねえ」
「そうなんだ……」
「気になる?」
「……別に」
聖里くん、あの人のことが好きなのかな。
……わたしにかけてくれた言葉は、嘘?
なんて。
考えるだけ無駄だし、何も見なかったことにしよう。
……確かに、可愛かったな。
お人形さんみたいで、小柄で、細くて。
男子が守ってあげたくなる儚い女子代表、みたいな。
勝ち目、ないかも。
わたし、こんなんだし。
特別細いわけでも、華奢なわけでもないし。
……考えないなんて、無理だよ。
あんなの見ちゃったら、心に黒いもやがかかったみたいに素直になれない。