「んーっ、疲れたあ!」


「おつかれさま、芙実ちゃん」





芙実ちゃんの机の上に広げられた二冊のノート。
一週間前からやってきてねって言われてた課題が明日提出なんだけど、先延ばしにしすぎた芙実ちゃんが案の定『なぎちゃん写させてーっ』って頼み込んでくる始末。




今日の朝から、休み時間や授業中、先生の視線の隙を突いてなんとかお昼休みに入ったところで終わったみたい。





「頑張ったからなんか奢って、なぎちゃん」


「えー?」


「おねがいっ、缶ジュースとかでいいから!」





自分がかわいく見える角度、熟知してるな……。
……まあ、今日一日くらいならいいか。





「仕方ないなあ」


「やったー! 自販機いくぞー」





課題終わったとたん元気になっちゃって。



意気揚々と教室を出ていく芙実ちゃんの後を追ってわたしも廊下へ出ると。



窓際に、聖里くん発見。
……でもその横には、知らない女の子。
上履きの色からして三年生だろうけど……。




聖里くんの口が、珍しくたくさん動いている。
その光景から目が離せなくなった。