わたしが素直に答えると、聖里くんは体を起こして、わたしの体も起き上がらせてくれた。
突然ソファに座らせられて、またなにかされるんじゃないかと聖里くんの顔を見上げると。
「……でも、もう絶対に浮気できないように、印つけないとね」
「へ、浮気って……っ」
今度はさっきほど痛くない。
首を吸われてる。
……キスマーク、ってやつ?
浮気もなにも、わたしたちは付き合ってないどころは両想いですらないんだし、その言葉は成立しないと思うんだけど。
でもそんなことを言ったらまだ聖里くんに睨まれそうだから、大人しくしておく。
「これでよし」
「……満足?」
「満足」
そうか。
ならよかったよ……。
なんだか、一気に疲れた。
もうこのまま寝ちゃいたいな……。
「なぎさ、眠い?」
「うん」
「寝るなら部屋行って寝なよ」
聖里くんのあたたかい声は、頭の遠くのほうで響いていた。
そのままソファに倒れこんで、あとのことは何も考えずに目を閉じる。
「……はあ、襲われたくてそんな無防備にしてるのかな、なぎさは」
ほとんど何を言ってるか聞き取れなかったけれど、うっすら開けた瞼の先で、聖里くんがわたしに毛布をかけてくれているのだけ見えた。



