【完】聖里くんの甘すぎる溺愛に耐えられない。







もうすっかり見慣れた玄関のドアノブをまわして、「ただいま……」と声を絞り出す。
まだあの騒音が耳に残ってうるさい……。



お風呂場にいくにはリビングを通らなきゃいけなくて、恐る恐るドアを開けて中を覗いた。





「……おかえり、なぎさ」


「たっ、ただいま」





うわああ、明らかに不自然な返事しちゃった。
絶対怪しまれた!




もういい、こうなったら強行突破だ。
聖里くんに何か突っ込まれる前に、さっさとお風呂場に……。





「ちょっと待って、なぎさ」


「……はい」





……終わった。
わたしは観念して聖里くんの元へ歩み寄る。




「……なぎさ」


「はい、……っわ!?」






心臓が止まるかと思った。
ソファに座っていた聖里くんに強い力で腕を引かれて、そのままソファに組み敷かれた。
……いわば、馬乗り状態。




先週も見たな、この構図。
でも明らかに違うのは、聖里くんが故意でわたしを押し倒したというところ。





「……ひ、ひじり、くん……?」


「なぎさから、他の男の匂いがする」


「へっ」




いや、へっじゃないでしょわたし。
分かってたことなんだから。
近くに寄ったら確実に匂いでバレるって分かってたはず!