「凪咲ちゃんあんまこういうとこ来ない?」
「あんまっていうか、はじめてで……」
「え、まじか! ビギナーズラックってやつじゃん、俺とかどう?」
え? ビギナーズラック?
俺とかどうって……どういうことよ。
だめだ、こういうよく知らない界隈のノリにはついていけない……。
「あは、まあはじめてなら仕方ないよね。てか俺の名前覚えてる?」
「……ごめんなさい」
「だと思った! 俺、平田ね、よろしく」
よろしくするつもりもないけど……。
そうこうしてるうちに平田くんに腰に手を回されて距離を縮められる。
うっ……食事の匂いと香水の匂いが混ざって気持ち悪い……。
それに、触られている部分もひんやりとして熱がサッと引いていく感じ。
自然と、聖里くんが頭の中に浮かんだ。
……なんでかはわからないけど、聖里くんとの会話を思い出すだけで、少しだけ気持ち悪さが軽減された気がした。
「俺、わりとマジで凪咲ちゃんタイプかも」
「……そう、ですか」
「マジこんな子と付き合えたら幸せなんだろうな~」
……遠まわしなアピールがとてもうざい。
心配しなくても、あなたと付き合う可能性はゼロなので、大丈夫です。



