「なぎさ、ココアのむ?」


「飲むっ」





振り返った笑顔がまぶしくて、俺は目を背けた。
何回寝て覚めても、夢だったらどうしようって不安になる。



夢であってたまるか。
こんな幸せな日々、一分一秒でも見逃したくない。




「はい」


「ありがとー」




猫舌ななぎさは、両手でマグカップを持って必死に息を吹きかけている。
……かわいすぎ……。



思わずなぎさの隣に腰を掛けて、その様子を眺めてみたら、なぎさは恥ずかしそうに「みないで」と上目遣いをしてくる。




これが計算じゃないって、まじかよ……。





「なぎさ、意外とバラエティ好きだよね。クイズ番組とか」


「うん。画面の向こうで人がわいわいしてるの見るの好き」


「……現実での騒がしいところは苦手なのに?」


「それは……音量調節ができないから」




それを聞いて妙に納得してしまった。
俺もその番組をじっと見ていたら、なぎさの姉も出演してることに気づく。




うーん……芸能人に向かって失礼だけど、やっぱりなぎさのほうがかわいい。
なんていうか、本当に唯一無二なんだよな。




俺はもう一度テレビに見入るなぎさを盗み見る。
「見すぎ」って怒られないように、ちらっと。



……あー、はやく俺のものになんないかな。



一年前から毎秒思っている願いを、最近、より一層強く感じるのは。
なぎさがこんなにも手の届く位置にいてくれるおかげなんだろうか。




「ちょっと、なにー?」





くるくる、なぎさのサラサラな髪の毛を指に巻いて遊べば、笑いながら反応はするものの全然嫌そうじゃないなぎさの表情を見れた。



……その困った笑い方、はじめてみた。




こうして俺は毎日、なぎさのことしか考えられなくなっていく。




だからなぎさもはやく、俺のことしか見えないようになって。