どんな奴がくるのかそわそわしたまま迎えた同居開始の日。
なぎさ以外の女子に興味はないけど、まだまともな奴だといいな、なんて。
学校から帰って、その女子が使う部屋を片付けてたら、インターホンが鳴った。
不安いっぱいの気持ちのままドアを開けて、俺は人生で一番心臓が止まりそうな思いをしていた。
「……え、今日からうちに来るのって、折田さん?」
しぼりだした声。
震えてたかも。……え、つか本物?
「……そう、だけど」
「……まじか」
心の中で思ったはずが口に出てた。
自然と口角が上がって口元を手で隠す。
学校だと無表情とか氷属性とか言われてる俺が、好きな子のまえだとこんなに表情のゆるみをおさえられないなんて情けない。
でも、悪い気なんか全然しなかった。
だって、これから一か月間毎日なぎさと喋れる。
もしかしたら触れたりするかも。
下心満載で気持ち悪いな、と自分でも思いながら、なぎさを中に通した。
……嘘だろ、俺の目の前でなぎさが歩いてる。動いてる。
こんな近い距離でなぎさが喋ってる。
高一の春から約一年半。
見てるだけだった片想い生活が、少しだけ進歩した。
それが、ほんの数日前の出来事。