それからの毎日は本当に楽しかった。
クラスは違えど、廊下に出れば見れる距離だったから、休み時間はなぎさを一目見ようと意味もなく廊下を歩いたりした。
見れば見るほど彼女のいろんな表情を知って、もっと知りたい、という感情が強くなっていった。
……端的に言うと、止められなかった。
なぎさへの気持ちが。
日に日に大きくなって、触れたい、話したい、一緒に出掛けたい。
そんな叶わない願いばかり大きくなって、破裂寸前だった。
「なあ、折田凪咲って、どんな子」
そう朝日に聞いてしまうくらい、俺の頭の中はなぎさでいっぱいだった。
朝日以外、誰にもこの好意がバレないまま高二の秋まで来たのに。
「……母さん、今なんて?」
『だからあ、知り合いの子がね、女の子をひとり一か月間預かってほしいっていうのよ』
その瞬間、俺は最悪って思った。
……同時に、もしこれがなぎさだったらいいのに、とも。
『ひーくんなら大丈夫よね?』
「……どうせ俺に拒否権ないんだろ」
『ふふっ。じゃあよろしく』
そういってぶつ切りされた。



