「確かにSHINAはわたしの姉です。でもそれとあなたたちになんの関係があるんですか」
「……は、はあ?」
「なにこいつ、急に……」
うろたえる女子たちの声と、変わらず強い口調で訴えるなぎさ。
「……SHINAが姉で誇りには思ってるけど、同時にコンプレックスでもあるので。姉妹だなんだって噂されたからって、わたしの鼻が高くなることはない、です」
そこではじめて、こんなうわさを流されているなぎさの本当の声を聞いて、俺は勝手に胸を打たれていた。
……だって、あまりに健気で、儚かったから。
俺は自然と立ち上がって、止めに入ってやるかと顔を出しかけたとき。
「……もう行きます」
そうして俺のほうに早歩きしてきたなぎさと、ぶつかりそうになった。
……なぎさをよける瞬間、彼女の涙が一瞬みえた。
俺のほうを一瞬ちらっと見上げて会釈したなぎさのことが頭から離れなくて。
なによりも。本当は泣いていたのに、その涙を武器にしなかったなぎさに、俺は強く惹かれていた。
「……おりた、なぎさ」
誰に聞かせるわけでもなく、俺の心を奪った彼女の名前を小さく口に出してみたら、自分でもびっくりするほど顔が熱くなった。



