ーー高校一年の六月。
このころから、なぎさは少し悪目立ちをはじめていた。
だけどそれまで、俺たちはクラスが違うっていうのもあって存在を認識しあってなかったと思う。
なぎさが目立っていた理由は、人気モデルのSHINAの妹だから、らしい。
朝日に写真を見せられてそのモデルとやらの顔見たけど、いまいちピンとこなかった。
たまたま廊下ですれ違ったときに、朝日に『今のが折田凪咲だよ!』と教えられたけど、比べられるほどかわいくないわけでもないのに悪目立ちして、かわいそうだなとしか思わなかった。
その日は朝日が職員室に呼び出されていて、待とうか一人で帰ろうかうだうだ悩んでいるときだった。
とりあえずココアでも買うか、とわざわざ人気の少ない自販機に立ち寄って目当てのものを手に入れたあと、近くから声が聞こえることに気づいた。
「——なんだよねえ、折田さん」
……折田?
最近噂になってる、あの折田凪咲か?
物陰に隠れて会話を聞いていると、女子の声は三人ほどしか聞こえなかったけど、話の流れ的にそこになぎさもいるようだった。
「SHINAの妹だからって調子のってるの見え見えっていうかあ」
「正直似てないし、本当に姉妹~?」
「ね! 噂流れたのをいいことに噓ついてんじゃない?」