「なぎちゃん」




いつの間にか帰ってきてた芙実ちゃんが、わたしの名前を呼んで手招きしてた。
不審に思いつつ、芙実ちゃんの少しうしろ、ドアの前に立つ二人の女子に目を奪われながら芙実ちゃんの元へ近寄る。




嫌な予感しかしないって、たぶん、全然勘違いじゃない。





「お話があるって」


「……」





芙実ちゃんの言葉に何も返すことなく、わたしはそろっとその女子に目を向ける。
二対一って卑怯でしょう。さすがに。




「むりだったら行かないほうが……」


「いや。行ってくるね」





これで誤解が解けるのなら解いておいたほうがあとあと楽だし。
……まあ、彼女たちがそこまで聞き分けいいとは思わないけど。



ていうか、聞き分けよかったらわざわざ呼び出したりしないだろうしね。





「おまたせしました」





聖里くんの件で、わたしのことがさぞ気に入らないんであろう二人の女子が顔を見合わせて歩き出したので、その背中を追った。




途中、遠くのほうに松野くんの姿を見つけて、思わず頼ってしまいそうになったけれど。
距離が離れていたし、松野くんの横を通ることもなく階段を下ってしまったから、なにも言えなかった。