「今日大雨だって」


「……まじ?」




昼休みの教室はがやがやと騒がしくて、落ち着いてご飯を食べるには少し向いてない。
隣でスマホを眺めながらサラサラの黒髪を指であそぶ芙実ちゃんがつぶやいた。



雨って……朝、そんな予報なかったよ?





「傘持ってる? なぎちゃん」


「持ってない……」


「だよねえ」




「わたしもー」とのんびり同意してくる芙実ちゃんは、予報をそこまで信じてるわけでもないのか、のんきそう。
まあ途中で外れることもあるしね……。
雨、降りませんように。





「ねーっ、きいたあ? 榛名くん早退したんだって」





不意に廊下のほうから甲高い女の子たちの話し声が聞こえた。
……聖里くんが早退? 体調でも悪かったのかな。



朝は……うーん、別に元気そうだったけどなあ。
仮病とか使うキャラでもないし。
心配するわたしをよそに、芙実ちゃんが「そういえば」と声を潜めて話しかけてくる。




「榛名くんで思い出したんだけど、なぎちゃん、榛名くんファンクラブに超目つけられてるよ」





いや、まあ、そうだよね。
そりゃそうだよねえ……。



あからさまに肩を落とすわたしに「まあ大丈夫大丈夫」と中身のないフォローをしてくる。
芙実ちゃん、事の重大さ分かってないでしょ。