「……嫌だった」


「いや、って」


「他の女子から下心満載でスポドリ飲んでって迫られて、よく知らない奴のスポドリのむくらいだったらなぎさのやつがいいって思ったんだ。……だから、考えるより先に足が動いてた」





聖里くんはまた俯く。
確かにわたしの平穏な学校生活は崩れてしまったけど、とてもじゃないけど『聖里くんがあんなことをしたせいで』なんて責める気にはなれなかった。





だって、いずれこうなってたと思う、っていうのは事実だし。



同居している以上、しかもその相手が影響力のある聖里くんである以上、一か月間丸々隠し通せるなんて最初から思ってない。
どこかでバレるって分かってた。






「……つまり、聖里くんはわたしを選んでくれたってこと?」






そう尋ねながら、わたしの足は聖里くんのほうへ。
隣に腰を掛けて、ふかふかのソファに全体重を預けた。





「うん」


「……じゃあいいよ、あとはなんでも。なるようにしかならないんだし」






考えても無駄だって。
口角をあげて笑ったわたしに、聖里くんはもう一度「ごめん」と謝った。




そもそも、謝れるだけで偉いと思うしなあ。
……なんて、何様なんだ、ほんと。





「あ、帰りにスーパー寄ってくればよかった」


「……作ってくれるの?」





聖里くんは申し訳なさそうにこちらの様子を伺った。
そりゃ、昨日作ってくれたし。交代交代のほうが一人の負担少なくなるでしょ。