【完】聖里くんの甘すぎる溺愛に耐えられない。








「……ただいまぁー」





引っ越してはじめての帰宅。
恐る恐る玄関のドアを開けて、顔を覗かせてみた。



お出迎えは……なし。
わたしは軽く呼吸を整えて家の中に入り、靴を履き替える。




リビングのドアノブにかけた手が震える。
どんな顔をして会えばいいか分かってないままだけど、とりあえず今は聖里くんに謝るしかない。





「っ……た、ただいま」




ソファに座る聖里くんの後頭部が見えた。
わたしのスポドリを奪って間接キスまでしてくれちゃった彼は、ゆっくりこちらを振り返る。





「おかえり」




よかった……意外と普通そう。
松野くんも『反省してた』って言ってたし、一人でいた時間にいろいろ思うところがあったのかな。





「……その、ごめん。なぎさ」


「へ」





どこに移動するわけでもなく立ち尽くしていたわたしに向かって、謝った。
聖里くんが。





「いや、でもいずれは噂になってもおかしくなかっ……」


「俺が軽率だった、すごく」





わたしのフォローを遮るように、聖里くんは反省の色を見せた。
軽率……って、学校ではいつも通りあまり関わらないようにしようって約束を破って、わざわざわたしの元に話しかけに来たこと?