芙実ちゃんは松野くんとのお話に夢中みたいだし、わたしはさっさと帰りますか。
大きなあくびをひとつこぼしながら席を立つと、廊下にいたもう一人のモテ男が視界に入った。
……あれ、今、目合った?
そんな気がしてもう一度榛名くんのほうを見てみたけど、榛名くんは他の女子からのお菓子を受け取るのに忙しそうだった。
うーん、やっぱり気のせいか。
っていうかよく考えてそんなことあるわけないし、あったとしてもたまたまだろうな。
スクールバッグを肩にかけて、ブルートゥースのイヤホンを装着して音楽を聴きながら下校。
芙実ちゃんがああやって男に気を取られて一人で帰る羽目になった日は、いっつもこんな感じで帰ってる。
榛名くんや松野くんがモテるのは十分知ってるんだけどさあ。
なんか、わたしにはわからないなあ。
そういう世界。
ブブ、っとポケットの中でスマホが震えた。
宛先を見ると……お姉ちゃんだ。
【今日もお仕事だから夜ご飯適当にたべてね】
……だから、それだったらわざわざ連絡してこなくていいっていつもいってるのに。
今日何度目かのため息をつく。
わたしなんて、昔からずっとひとりぼっちだし。
芙実ちゃんがいなけりゃ、学校でだって孤立してた。
今日も夜、ひとりかあ。
もうどうだっていいけどさ。
わたしは仕方なくとぼとぼと帰路について、夜ご飯何にしよう、なんて考えていた。