「それ、ちょーだい」
「……それ? スポドリのこと?」
「うん」
何故わざわざわたしに……。
ほら、うしろで女子のみなさんがざわざわしてるよ?
わたしが自分の飲みかけのスポドリを手渡すと、聖里くんはそれを一口のんで、床に置いた。
芙実ちゃんは唖然として会話には入ろうとしてこない。
「次、女子対男子やるって。来る?」
「えー……バスケ下手だからやだ」
「じゃあ見てて」
見てて、って。
後ろに言葉が省略されていた気がしてつっかえた。
聖里くんが立ち去ったあとで、意識を取り戻したらしい芙実ちゃんが慌てて腕をつかんでくる。
「な、なぎちゃんっ……なにいまの? なんで榛名くんが?」
「あー……なんだろうね」
聖里くんがわたしのところに来た理由は本当に分からない。
これで変な噂になったら聖里くんのせいだからね。
「す、すぽどり……間接、キス……!」
「……」
盲点だった。
急に顔が熱くなって、抱えた膝に顔をうずめる。
……聖里くん、それ狙い?
まさか。……まさか、ね?
でも。
わたしよりかわいい子ならいっぱいいるのに、わざわざわたしのを飲みに来た理由は……やっぱりわかんないな。
関わり始めて間もないっていうのもあるけど、聖里くんのことはまだつかめない。
「ちょっと! どういうことか説明してよっ」
芙実ちゃんに体を揺さぶられても、わたしは一言も発さなかった。
なんてことをしてくれたんですか、聖里くん……!



