「わたしは……まだ、いいかな」
「えーっ。わたしの恋をこんなに近くで見てても?」
「それは余計に、じゃない?」
「なにそれどういうことっ」
芙実ちゃんの恋は参考にならないよ。
一途が大事、ってことくらいしか学べない。
今まで数多の男たちに振られてるのを間近で見てきたら、ねえ……?
「なぎちゃんの恋バナも聞きたいのに! いつもわたしばっかり聞いてもらってるし」
「まあ……わたしは芙実ちゃんの話聞いてるだけでおもしろいからいいよ」
「ふうん……」
気にくわなそうな顔をしておりますけども。
これ以上恋愛事情について詮索されたくなくて、なんとなくふらーっと視線を動かす。
廊下に見覚えのある影を見つけて、ほんの少しだけ口角があがった。
「なに、榛名くん? なぎちゃんってそんなミーハーだっけ」
「そんなんじゃないって」
じっとみてたら、ぱち……と目が合った。
相変わらず無表情。家でのあれはいったいなんだったのか聞きたい。
誰になにを話しかけられても表情筋凝り固まったんかってくらい口しか動かない。
……でもあれって、自然となってるだけなのかな。それとも、意識してあのキャラを作ってるのかな。
「あっ、松野くんもきた!」
聖里くんに用があったのか、横に立ってなにやら楽しそうにお話してる。
視界の端っこで、芙実ちゃんが松野くんの元へ走っていくのが見えた。
わたしは次の授業の準備を終わらせて、机に伏せて目をつぶった。
朝早く起きてしまった代償がいま襲ってきてる。
めちゃくちゃ眠たい……。
目を閉じて数分もしないうちに、わたしは夢の世界へと落ちていた。



