家に帰ってすぐ、聖里くんはお風呂に行ってしまった。
意地でもわたしを先に入らせようとしてきたけど、わたしの入ったあとのお風呂に聖里くんを入れさせるなんてできなかったし……仕方ない。





やることもなくてソファに座ってひとりテレビを見ていると。




ぶぶ、とスマホが震えた。
着信。……しいちゃんからだ。




通話ボタンを押してスマホを耳にあてた。





「もしもし」


『もしもし、なぎちゃん?』


「うん。どうしたの」





いつもの元気な声。
スピーカーにしてないのによく聞こえてくる。





『なぎちゃん元気にやってるかなーって思って』


「まだここ来てから一日も経ってないよ……」


『あれ、そうだっけ』





なにからなにまで適当なんだから。
これでいて仕事は完璧だし、業界でも有名な”ミスしない女優”でもあるらしい。




「ていうかしいちゃん。聞いてないよ、男の子の一人暮らしなんて」


『言ってなかったね! でもなぎちゃんの同級生なんでしょ?』


「うん、隣のクラス」


『じゃあいいじゃん! イケメンって聞いたよ』




……イケメンとかそうじゃないとか、あんまり関係ないんだけど。
何がいいのかもわからないし。
ていうかむしろ、イケメンであることが重荷になっているというか……。