わたしたちが晴れて恋人同士になってから、三日の時を経て、運命の金曜日がやってきた。





「やっぱり、家まで送って行こうか?」


「……いや、ほんとに大丈夫」





昨日の夜、しいちゃんから電話があって『工事終わったからいつでも帰ってきていいよ』って。
いつでもって言われたから、こんな翌日に帰らなくたってよかったんだけど……。





長引かせると、あとから辛いから。





キャリーケースにまとめた荷物をひきずって、玄関でお別れの挨拶タイム。




来るときはしいちゃんのマネージャーが送ってくれたけど、今日は仕事が忙しくて来られないんだって。






「泣いてる?」


「……泣いてない」



「泣いてよ」





俯いたまま一向に家を出ていこうとしないわたしを不審に思ってか、聖里くんがわけのわからないことを言ってくる。



泣いてよって……なんだそれ。