「まーた彼氏と別れたあーっ」
ぐぐっと机に伸びをしながら伏せる友人の声に耳を傾けながら、教科書をトントン、と机に叩いてそろえた。
中学からの親友である高坂芙実(こうさかふみ)ちゃんのサラサラな黒髪ボブが机に垂れる。
「またあ?」
「これみて」
わたしがあきれながら言うと、芙実ちゃんはスマホの画面を見せてきた。
そこに映っていたのはメッセージアプリのトーク画面で、おそらくお相手は彼氏……もとい、元カレさん。
【ごめん。別れよ】
【他の男しか見えてないの分かりすぎて無理だわ】
……またおんなじ理由だね? 芙実ちゃん。
「だからそういう付き合い方やめなって言ったじゃん」
「だってぇ……叶わないってわかってるのに追いかけるの辛すぎるんだもん」
ふう、と小さくため息をついた。
……そうだよね。
叶わない恋なんて、辛い。
いつも美人な姉と比べられてきたからこそ共感できる。
でもね? 芙実ちゃん。
わたしは、少なくとも芙実ちゃんのこと気に入ってると思うけどなあ、彼。