「ね、なぎさ」
「……うん?」
「だきしめて、いい?」
なんで。
なんで、わざわざきくの。
わたしは言葉にせず、静かにうなずいた。
瞬間、聖里くんの暖かさに包まれる。
……わたしが大好きな、匂い。
安心して眠れそう。
わたしだって。
聖里くんの彼女になれたらって、強く思うよ。
「……ほんとに、好き」
「う、うん」
「大好きなの、伝わってる?」
「伝わってるから……っ」
ドキドキしてしにそうだから、ほんと、だめです。
聖里くんは簡単に人の心を奪ってしまう自覚をしたほうがいい!
「……俺、もう我慢しないよ」
なに、それ。
怖いんだけど。
さすがに、学校では自重してね?
「……かえろっか、なぎさ」
案外あっさり離れた聖里くんは、「あんまり長引かせると歯止め効かなくなりそうだから」と困ったように笑った。
当たり前のように一緒に帰ることになっていて、繋いでと言わんばかりにサッと差し出された手は、さすがに断った。
その夜。
興奮のあまり、勢いで芙実ちゃんに電話して、事情を説明した。
あの聖里くんに、告白されちゃった。
大好きなひとと両想いだった。
そしたら芙実ちゃん、またおんなじこと言った。
『あんまり待たせちゃだめだよ』って。