正論だと思ってくれたのか、榛名くん……もとい、聖里くんは黙り込んだ。
でもそうか、聖里くんにとっては、一人で家事をするなんてのは当たり前なのかな。
……わたしもそうだったし。
「……じゃあ、分担しよ」
「うん」
不服そうに見えるけど、見て見ぬふりしとくね。
これだけは譲れないからわたしも折れないよ。
「あー、結構押し強いタイプなんだね、なぎさ」
「強くない強くない。ここで負けるのは、それこそ不服だったから」
「……先が思いやられるなあ」
そう? わたしは楽しみだけど。
すっかり飲むのを忘れていたカフェオレに口をつけながら、そんなことを思う。
「おいしい?」
「うん、作るの上手だね、聖里くん」
「……まあ、昔から俺も好きだったし、よく作ってたから」
目、そらされた。
なんで? 変なこといった?
……もしかして、名前呼び?
変だなあ。
聖里くんが名前呼びしてほしいって言い出したのに。
「聖里くん、顔真っ赤」
「……うるさいなあ」
新鮮でおもしろいんだよ。
みんなに教えてあげたいけど、でもこんな聖里くんはわたしが独り占めしたいかもなんて、欲張り。
ていうか、みんなに伝えたところで信じてもらえなさそうだし、やっぱりわたしの中だけにとどめておこうかな。