「それって、わたしと一緒に住めるのがうれしいって解釈で……」
「……合ってる」
なんで合ってるんだ。
だって、そんなのおかしい。
榛名くんはわたしなんかと交わったことのない人間だし、端的に言うと、住む世界が違う。
だから、わたしのことなんか目に留まるはずないし、名前を覚えてもらえてただけでも奇跡に近い。
「……そう、なのか」
「そうです」
「わたしも、他のだれかっていうよりかは、榛名くんでよかったって思ってるけど」
思ったことを素直に口にすれば、榛名くんは綺麗な顔を赤く染めてそっぽを向いた。
……かわいい、な。
普段無表情の榛名くんばっかり見てるから、そう思うだけなのかもしれないけど。
「ていうか、なぎさもその呼び方やめてよ」
「え? ……いやわたしは、このままで」
「ダメでーす、次榛名くんとか呼んだら夜ご飯の買い出し行かせるよ」
うーん。
それくらいだったら、全然罰ゲームになっていないけれど。
まあ、片方だけが名前呼びなんて不公平だし、いっか。
「いいよ。……ていうかそれなら、家事分担とかする?」
「え。一応なぎさは客人だし、俺がやろうと思ってたけど」
「客人って。一か月は短いけど、わたしもこの家の住人なんですけども」