わかってた。
家から出るにはリビングを通らなきゃいけない。
だから絶対見つかるって。
でも。
「どこ行くの?」
こんな風に呼び止められるとは思わなかった。
聖里くんには関係ないとか、今まで話しかけてこなかったのにこういうときだけとか。
嫌な言い方をしてしまいそうで、何も言えない。
聖里くんの顔すら見れなかった。
……こんなにも大好きな人が近くにいるのに、思ってもないこと言いそうだから変に喋るのはやめた。
「なぎさ、答えて」
「……すぐ、もどる」
結局それだけ言って、家を飛び出した。
聖里くんは……追いかけてこなかった。



