「……じゃあ、わたし帰るね」


「うん」





足早に駆け出そうとする彼女の背中を、ここでもまた柄にもなく呼び止めた。
振り返ったなぎさちゃんのサラサラな黒髪、大きな瞳、白い肌。
そのすべてに、俺は恋をした。





「また、明日ね」


「……うん、またあした」





彼女にとって、これはなんでもないことだったんだろう。
覚えておくほど価値のある思い出じゃなかったから、今でも忘れているのかもしれない。




でもね、俺は絶対に忘れないよ。



俺に恋の輝きを教えてくれた、あの日。
異様に速い心臓の鼓動となぎさちゃんの暖かさに胸が締め付けられた、あの時間を。






俺は高校一年のあの日から、高校二年に上がった、今の今まで。




ずっと、ずっとなぎさちゃんのことが好きだ。
そして、これからも。




消えることはないよ。
たとえなぎさちゃんが、榛名と結ばれたとしても。





……っていうか。
ここまで来て付き合わなかったら、ほんとただじゃおかない。




今度こそ奪ってやるから覚悟しとけよ、榛名。





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