「……ほんと? じゃあ、お願いしようかな」


「うん! どんなやつ?」





特徴を手短に説明すると、なぎさちゃんは一緒に廊下の隅から隅まで探してくれた。
俺より離れた場所で、そんなに離れたら落ち合えるかなあ、と考えながら。





それから、しばらくの時間が経った。
正確にどれくらいかはわからないけど、たぶん2,30分くらい?




やっぱりもうないかなあ……そう諦めかけていたとき。




タタタッ、と大きな足音が聞こえて顔を上げると、遠くのほうから慌てて走ってくる人影が見えた。




「はあ、はあ……っ」


「……だ、大丈夫? そんなに走らなくてもいいのに。あった?」


「う、うんっ、あった……! これだよね?」






なぎさちゃんの手のひらでころん、と転がったそれは、まさに妹が作ってくれたものだった。
これで妹を悲しませずに済む、という気持ちと、
ここまで必死に探してくれるなぎさちゃんに胸が熱くなった。





……単純だった。
たったそれだけのことが、俺にとっては一大事。





「折田さん関係ないのに……ありがとう」


「ううん。だってそれ、大切なんでしょ? 誰かが悲しむの、見たくないし」





びっくりした。
だって、事情なんかなにも説明してない。
妹を悲しませたくないという俺の気持ちまで見透かされてるみたいだった。





……じゃあ、今の俺のこの心臓の心拍数も、見透かしてくれればいいのに、なんて。




柄にもないこと思って、なぎさちゃんの俺より頭一つ分低い位置にある目を見つめた。