【完】聖里くんの甘すぎる溺愛に耐えられない。






ただ眺めるだけの生活から、一変。



ずっとカバンにつけていたキーホルダーをなくした日のことだった。




どうでもいいものだったらなくなってても気にしないんだけど。
あれは今年八歳になる妹が慣れない手つきで作ってくれた俺へのプレゼントだったから、なくしたことで悲しませるのは良心が痛んだ。




放課後、無理矢理カラオケに誘おうとしてくる伏枝を「先に帰れ」って追い返して、ひとりで廊下やら教室やら、今日自分が通ったであろう道をひたすら探していた。




……そんなときに現れたのが、折田凪咲。
俺がずっと探していた女の子だった。





「……有馬くん? なにしてるの?」




パッと顔をあげて、真っ先に今日は一人だ……ってうれしくなった俺はだいぶ気持ち悪い。
自覚してるから、今更動じない。





「あー……探し物?」





今思えばそこでキーホルダーなくして、って説明したらよかったのに、変にかっこつけて濁した挙句、なぎさちゃんに気を遣わせることになる。





「わたしも一緒に探そうか? ……その、いらなかったら、帰るけど」





一瞬遠慮しそうになって、俺の中の天使だか悪魔だかが俺のことをひっぱたいた。
これ以上のチャンス、きっともうないぞって。