……遅い。
時計の短針は9の数字に重なる。
聖里くんが、まだ帰ってこない。
話したくないとか、聖里くんなんか、とか言っておいて、結局こうしてリビングのソファで帰りを待つわたし。
気を紛らわせるためにテレビをつけてみるけど、内容がなにも頭に入ってこない。
……あの子と、ご飯も食べてくるのかな。
わたし、今日もひとりで食べなきゃいけないのかな。
単純な気持ち。
寂しい。
前までの聖里くんはどこかへ行ってしまった。
今はただそばにいてくれるだけでいい、本当は話したい。
聖里くんが急に女の子と遊び始めた理由を、ちゃんと本人の口からききたい。
ーーガチャ。
考え事をしていたら、不意に玄関のドアが開いた。
ドク、ドク。
心臓が鼓動を速める。
足音がリビングに近づくたび、喉から心臓が飛び出そうになる。
「……なぎさ」
久しぶりに、名前呼ばれた。
それだけで涙がこぼれそうになったけど、必死にこらえて、でも顔はそむけたまんま。
「……おかえり、遅かったね」
「うん、ただいま」
「ご飯いらないでしょ?」
「……うん」



