どんどん負の連鎖に陥っていく。
こんなの、無理だよ。
ただの告白現場を目撃するより、ずっと精神的ダメージが大きい。
わたしはその二人の会話が終わるより先に逃げ出したくて、廊下を走った。
泣かない。
絶対、聖里くんなんかのために泣かない。
……あんなひとだと思わなかった。
「うおっ、びっくり……って、ちょっと!」
階段から降りてきた人影にぶつかった直後、腕をつかまれた。
ああ、最悪……。
有馬くんじゃないだけまだよかったけど。
「なに、どうしたの折田」
「っ……まつの、くん」
優しい声色が余計胸に刺さる。
ダメ……泣かないって、決めたのに。
「なんで泣いてるわけ、誰に泣かされた?」
「……ないて、ない」
「どう見ても泣いてるし。また女子? 嫌味言われた?」
……違う。
あの女の子は、なにも悪くなかった。
ただ純粋に聖里くんのことを好きで、勇気を出して告白しただけ。
わたしは弱弱しく首を横に振って、小さな声で助けを求めた。
「……ひじりくん、女の子と遊ぶ約束してた」
名前呼びしたことに関しては何も触れず、松野くんは「……まじで?」と驚いたように言う。
わたしが頷くと、「なにしてんだよ、あいつ……」とため息をついた。