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「今月に入ってからはじめてじゃない?」
金曜日のお昼休み。
芙実ちゃんの声を聞きながら今日も聖里くんが作ってくれたお弁当を広げる。
はじめてって……なにが?
「榛名くんが呼び出されたの」
「……えっ」
呼び出し? それって……先生にとかじゃなくて、たぶんこの言い方は、女の子に……だよね?
「そ、そうなんだ」
「榛名くんなんて告白するだけ無駄なんだし、大人しく見てればいいのにね」
「……うん」
告白するだけ無駄。
その言葉が、ずしん、と重い岩みたいに心にのしかかった。
聖里くんは誰とも付き合わないしね。
それは学年どころか学校中のみんなが知ってること。
……わかってても、寂しくなるなあ。
「松野くんはよく呼び出されてる気がするけど」
というわたしの言葉に、
「そりゃ、榛名くんよりガード緩そうにみえるからでしょ。そんなわけないけどね」
芙実ちゃんが、すこし早口に答えた。
たしかに、聖里くんはガード堅そう。
っていうか、カチカチそう。
……やっぱり、彼女とかいらないのかな。
「なに、焦った?」
「へっ」
「榛名くんが告白されてるって聞いて」
「ち、ちがうから!」
芙実ちゃんはたまにとんでもない爆弾発言をする。
そんなわけない。聖里くんはモテるし、告白されるのがむしろ当たり前!
……なのに、内心焦ってるかもしれないって自分でも思ったから、それ以上強くは言い返せなかった。
「……喉乾いた。飲み物買ってくる」
「ん、わたしのお茶もよろしくー」
さりげなくパシリに使われた気がするけど。
気のせいだよね、たぶん。
わたしはお財布だけ持って教室から出た。