開きっぱなしにしていたドアのほうから、教室内でよく聞いている声が聞こえた。
振り返ると、やっぱり毎日目にしている顔。





「有馬(ありま)くん」


「折田さんって社会係だっけ?」


「ちがう……けど、これ、先生が運べって」





近寄ってきた有馬くんに向かって段ボールを指さすと「あの教師も鬼だなあ」とのんきなことを言っていた。





「俺片方持つよ」


「え、ほんと? いいの?」


「いいよ、男だし任せといて」





そういって、大量の資料が入った箱を軽々と持ち上げてしまった。
続いてわたしも持ち上げようとするけど……え、なにこれ、重っ。





「あは、無理したら腰痛めるから気を付けて」


「いや、大丈夫……っ」





やっとの思いで持ち上げて、両腕にかかえる。
あと五分で授業始まるし、急がなきゃ。



廊下に出て、二人で教室のほうに向かう。
思えば……こうして、有馬くんと二人きりになるのも、こんなに近くに寄るのもはじめてだな。




気まずいからなにか話したいけど……有馬くんのことなにも知らないから、話題提示もむずかしいよ……。





「なんか新鮮だよなあ、俺らがふたりでいるの」


「えっ……あ、うん、そうだね」




急に声を出した有馬くんにびっくりした。
有馬くんも同じこと考えてたんだ。