「おー、折田。ちょうどいいとこにいた」


「……はい?」





水曜日の休み時間。
松野くんに夢中になっている芙実ちゃんを置き去りにして一人でふらふらと購買へ向かっていたら、先生につかまった。





「お前ら、次世界史だろ?」


「はい」


「授業で使う資料運んどいてくれないか?」






嫌な予感ってだいたい当たるんだよね。
なんでかな。わたしはただ購買に行きたかっただけなのに。





「先生が自分で行けば……」


「俺は今から用事があんの! ってことで、社会科準備室に置いてあるからよろしく」


「あっ」





……逃げられた。
あと数分後にはじまる授業の準備より大事な用事ってなんですか……。




だけど頼まれた手前そのままにしておくわけにもいかず、とりあえず準備室に急いで向かった。





「……うっそ」





あの教師の破天荒を甘く見ていた。
……段ボール二箱あるのは聞いてない、先生。



さすがにこれをひとりで持つのは不可能だし、二回に分けて往復するのは時間が足りないし……。




どうすることもできなくて途方に暮れていると。




「あれ、折田さん? そんなとこでなにしてんの」