お姫さま抱っこなんて……っ。
「藍にぃやるぅ!」
「藍都! 抜け駆けすんなよ!」
「彩がホンモノのお姫さまに見えるよ」
「うぅ……」
ケガして歩けないわけじゃないのに、こんな……っ。
注目を浴びて、また体が熱くなる。
「そこまでだから。歩くよ」
「うん……」
藍くんにお姫さま抱っこをされて、クレープ屋さんの前まで運んでくれた。
イスの前で、そっとわたしの体をおろしてくれる。
「しばらくここで休もうか」
「ありがとう、藍くん」
「ん」
短い返事をして、藍くんが隣に座った。
藍くんはいつも優しいな。
マンガのヒロインや、お姫さまみたいに大事にしてくれる。
今日が誕生日だから特別ってことじゃない。
「どうした? 座ってても痛い……?」



