「えっ……!」
肩がビクッと跳ねて、ドアのほうを見た。
だけど、誰かが通る足音は聞こえない。
あれ……?
「藍くんいる……?」
試しに聞いてみると、両手を顔の前で合わせる橙ちゃん。
「ごめん! いまのじょーだん」
えぇ! 冗談だったの……!?
「橙ちゃん……っ」
「彩ねぇが可愛くてつい……じゃなくて! 彩ねぇが藍にぃのことどれだけ意識してるか知りたくて……。
あんまり僕から言われたくないと思うから、彩ねぇ自身に気づいてほしくてさ」
冗談と言いつつ、わたしのことを気遣ってしてくれたんだ。
わたしが、自分の気持ちに素直になれるように……。
「彩ねぇ」
橙ちゃんはわたしの手の上に自分の手を重ねた。
「僕に……ドキドキする?」



