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『舞彩ちゃんだけは特別なのね』

『うちだったら好きになっちゃうなぁ。てか、あんなに大事に思われてみたいな〜』



授業中も頭の中で繰り返される、保健室の先生や紫音ちゃんの言葉。

今まで意識していなかったはずなのに、そういうふうに思うと態度に出ちゃうもので……。



「今日はバイトで翠聖の帰りが遅くなるらしい。材料も足りないみたいだから、買い物してく?」



帰り道に藍くんが横目でわたしを見て聞いてきた。

日常の会話でさえ、ドキッと胸が跳ねてしまった。



「そ、そうだね!」



どうしてか、藍くんに眩しい光のフィルターがかかってるみたいにかっこよく見える。

そう思うようになったのは、女の先輩から藍くんが助けてくれたときから。


『俺がいるから大丈夫』


藍くんはいつもわたしを安心させてくれるよね。


あのときは、藍くんがヒーローに見えたな……。



「……舞彩? 俺の顔になにかついてる?」